野依良治さん、よくぞ座長を引受けてくださいました

 官製だろうとなんだろうと、いま、日本が一番取り組まなければならないのは、教育改革です。2001年ノーベル賞受賞、現理科学研究所理事長の野依良治さんが、安倍晋三首相肝いりの教育再生会議の座長を引受けられました。「すべての人がまっとうな人間観を持つために役に立れば」と、決断されたという(毎日新聞10/12ひと欄)。この言葉に打たれました。


 教育といえば、一人の先生が、これほどまでに敬愛されるものでしょうか。ラファエル・フォン・ケーベル、ドイツ系ロシア人(1884〜1923,横浜で客死)。真の先生というのは、知識を与えるだけではなく、人の心に灯を点すのですね。


 ケーベル先生は、1893年明治26年)から1914年(大正3年)まで、東京帝国大学に在職しギリシャ哲学などを教えた。一時、東京音楽学校東京芸術大学)でピアノを教えたこともある。教え子に、岩波茂男、安部次郎、九鬼周造夏目漱石らがいて、ケーベル先生を語る時、その語り口がなんともいえない優しさを帯びているのである。


 青空文庫 http://www.aozora.gr.jp/index.html 図書カード:No.771 作品名:ケーベル先生の告別 著者名:夏目漱石から、一節。


 ―――すべてこんなふうにでき上がっている先生にいちばん大事なものは、人と人を結びつける愛と情けだけである。ことに先生は自分の教えてきた日本の学生がいちばん好きらしくみえる。私が十五日の晩に、先生の家を辞して帰ろうとした時、自分は今日本を去るに臨んで、ただ簡単に自分の朋友、ことに自分の指導を受けた学生に、「さようならごきげんよう」という一句を残して行きたいから、それを朝日新聞に書いてくれないかと頼まれた。先生はそのほかの事を言うのはいやだというのである。また言う必要がないというのである。同時に広告欄にその文句を出すのも好まないというのである。私はやむをえないから、ここに先生の許諾を得て、「さようならごきげんよう」のほかに、私自身の言葉を蛇足ながらつけ加えて、先生の告別の辞が、先生の希望どおり、先生の薫陶を受けた多くの人々の目に留まるように取り計らうのである。そうしてその多くの人々に代わって、先生につつがなき航海と、穏やかな余生とを、心から祈るのである。―――

 

 
教育改革と新自由主義 (寺子屋新書)

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