「戦争か」「平和か」 「泥棒をするか」「乞食をするか」

10月22日、 花田清輝の『泥棒論語』を観た。1957年(昭和32年)発表の戯曲なのに、あまりにも今日的なテーマで、戦慄を覚えた。正式には、「第3回シアターX(カイ)中秋恒例の花田清輝の『泥棒論語』と私たちの[非暴力論語]ええないかぁ・カーニバル編」(演出白石征)という。初演は 土方与志演出で1958年(昭和33年)。


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「戦争か」「平和か」 「泥棒をするか」「乞食をするか」。これは対句です。いきなりこうしてはじまる。戦争は泥棒することで、平和は乞食をすることだ。それはそうだな。イラクをみよ。石油泥棒のアメリカが攻めこんで、巻き上げて、あとはおこぼれで、イラク人民よ 平和に暮らせ。(特別出演小沢信男プロローグ考より)
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これは、戦争か、平和か、しかし、それ以外に第三の道はないのか。あるか、ないかの選択ではなく、もはや求めずにはいられない切望を、どう求めていくかに、正面から取組んだ芝居である。



サブタイトルに、『土佐日記』によるファンタジーとある。紀の貫之と藤原純友との対立を通して、花田清輝式の第三の道を追及する。シアターX(カイ)プロデュース第三回目の公演ともなれば、新しい実験が小気味よく採り入れられている。横山道乃(道代)さんが、現代のドレスの衣装で、貫之の娘・紅梅姫を演じたが、違和感はない。不思議なコントラスト。


『泥棒論語』が初演された1958年秋には、キューバ革命が進行していて、ほどなく革命成就、カストロが実験を握って現在にいたる。ほぼ50年後でも、依然として第三の道は定まらず。案の定、北朝鮮核実験に続いて、日本政府閣僚から核保有への発言が出る。驚くことはない。一度、ぎりぎりまで議論した方が良い。忘れてならないのは、過去、どんな戦争も、みな、自衛のための名目で突き進んでいきました。


シアターX(カイ)
東京都墨田区両国2−10−14
TEL:03(5624)1181 FAX:03(5624)1155
http://www.theaterx.jp




花田清輝集 (戦後文学エッセイ選)

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尾崎翠と花田清輝―ユーモアの精神とパロディの論理

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