先に、読んでおきたかった梅田望夫著『シリコンバレー精神』

ウェブ進化論』の梅田望夫さんが、毎日新聞夕刊(毎火曜)に、「ダブルクリック」というタイトルでコラムを持った。どちらかというと、コンベンショナルな書き手を採用してきた大新聞が、ニューウェーブ梅田望夫さんを、夕刊の‘売り’コラムに起用したのは、その革新性が感じられて喜ばしい。毎日新聞さん、これはヒットですよ。


10月24日、同コラム掲載の表題「新しい文体」の中で指摘された内容は、遅れてやってきたオールド・ネット市民としても、思わず膝をパンパンと叩いてしまった。原稿用紙に文章を一字一字書いてきた世代と、キーボードを指がブラインドでなめていく世代とでは、思考パターがぜんぜん違ってくる。ロートルパラダイムシフトを余儀なくさせられるのだ。


梅田さんの偉いところは、二つの世代に、同等の理解と知見をお持ちなところです。だから、ネット・ベンチャーの若者が、記者が書いた新聞記事がそのままネット上に転載されても、短すぎて人気が出ないのだというくだりは、ショックであると同時に、ものすごく納得がいくのです。旧世代にとっては、文章を書くとき、ミニマリズムが正義でしたから。


私は、CNET JAPAN http://japan.cnet.com/ のメルマガ配信を受けていますが、一つ一つ記事が長くて読みきれないでいました。いつも、腹の中でもっと短くしてよ!と叫んでいましたが、こちらが読み方を変更することにします。几帳面に読みすぎるんだよ、お前は。ハイ、御尤もで。


梅田さんは、1994年10月シリコンバレーに移住し、「月に一通」と心に決めて、5年間に書いた「シリコンバレーからの手紙」60通を一冊の本として『シリコンバレ ー 私をどう変えたか』に纏めて、2001年8月出版した。『シリコンバレー精神』はその改題文庫判。原本には加筆修正を加えず、「文庫のための長いあとがき ー シリコンバレー精神で生きる」60枚が書き下ろされた。


原本の記述は、正にシリコンバレー盛衰記の生き証人で、下手に変えたら歴史が改竄されてしまう。たとえば、文庫化に際して再読するまで、梅田さん本人が、原本の中にグーグルへの言及があることをすっかり忘れていたという。なぜなら、2001年当時のグーグルは、まだ何ものにもなっていないベンチャーだったからである。読んでいて興奮が抑えきれなくなる。


骨抜きになっている若者たちよ、ぜひ読みたまえ、偉そうな言い方で悪いけどね。シリコンバレー精神を一言で伝えると、tenacious であること だという。

1. Holding or tending to hold persistently to something, such as a point of view.
2. Holding together firmly; cohesive: a tenacious material.
3. Clinging to another object or surface; adhesive: tenacious lint.
4. Tending to retain; retentive: a tenacious memory.



梅田望夫ブログ『My Life Between Silicon Valley and Japan』:http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/


シリコンバレー精神 -グーグルを生むビジネス風土 (ちくま文庫)

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ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

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