「ああ、あの日本の職人といったら!
何と彼らは頭のよい人たちだったろうか。そして、何という器用で勤勉な人たちだったことだろう。 ・・・私は彼から学び、そして彼らとともに彼らのやり方で、よろこんで仕事をすすめたのであった」
大正11年(1922)年、帝国ホテルが竣工したとき、アメリカ人の設計者フランク・ロイド・ライトはいう。
「日本の持つ美的な伝統というものは、世界の中で最も高貴なもののトップにランクされている。私が日本人の建物の設計を依頼されたとき、日本を侮辱しないということが、私が本能的に感じたことだったし、また、明確な意図であった」
「地震の存在、この第一の問題は、私がこの新しいホテルを計画し、そして完成させるために働いた四年ほどの間、私の頭から離れたことはなかった」(参照:『人間臨終図巻Ⅲ』山田風太郎著徳間文庫)
そして、冒頭の発言に続く。このところ、気が重くなることが続いていて、やっちゃいられません。気晴らしに大正時代にタイムスリップすることにしました。しかし、核保有論議から逃れようとした思惑も外れ、着いたところでも、災害が起きていました。
ライトが日本を去った後、大正12年(1923)年9月1日午前11 時58分マグニチュード7.9の大地震が帝都を襲いました。ライトはそのときロサンゼルスにいました。アメリカの新聞は、帝国ホテルの崩壊を報じ、ライトは悶々としていました。そこへ、一通の電報が届きました。
「ホテルハ貴下ノ天才ノ記念碑トシテ壊レズ家ナキモノ多数完全ナサービスヲウケ祝辞をノブ」
帝国ホテル オーナー大倉男爵
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