井原隆一著『采根譚を読む』を読む

10月30日、中国文学者の白川静先生がご逝去されました。私のなけなしの中国の言葉でおみおくりさせてください。合掌


鷹の立つや睡(ねむ)るがごとく、
虎の行くや病(や)むに似たり。
ゆえに君子は聡明を露(あら)わさず、
才華(さいか)は逞(たくま)しくせざるを要す。

(一度声を出して読んでみてから、次へどうぞ)
(鷹の立っている姿は眠っているようであり、虎が歩く様子は病人のようである。だが、それは人に襲いかかり咬みつく手段である。君子もまた才能を外に現したり、才知をむやみに振りまわさないほうがよい。それでこそ天下の大任を果たすことができるのである)


家人過(あやまち)あらば、よろしく暴怒(ぼうど)すべからず、よろしく軽棄(けいき)すべからず。このこといい難(がた)くば、他のことを借りて隠(いん)にこれを諷(ほのめか)せよ。今日悟(さと)らざれば、来日(らいじつ)を俟(ま)って再びこれを警(いまし)めよ。春風の凍(こお)れるを解くがことく、和気(わき)の氷を消すがごとくして、わずかに家庭の範例(けいはん)なり。
(家庭の者に過失があっても荒々しく怒ってはならない。といって何もいわず、ただ捨ておくのもよくない。もし、いいにくいことなら他のことにかこつけて婉曲に話すことである。一度で効き目がなかったら、時が過ぎてから話すがよい。そうすれば春風が氷を解かすように、おだやかなうちに家庭の円満を保つことができる)


古典を紹介するとき、人によってバイアスがかかってしまうのはは避けられない。無造作に言えば原典を読んで下さいとなるが、百人百様の読み方があっていいと思う。入門には講談社学術文庫判『采根譚』中村璋八・石川力山著がよい。


私は井原隆一さんの『采根譚を読む』によって『采根譚』を知った。それは、2003年8月8日第1刷発行で、本の腰巻に‘九三歳にして、土に親しみ、日々農業に励む。「元経営の名人」、「人生の達人」!’のコピーに惹かれてしまった。いまも、井原さんは、ご健在とうかがっている。


井原隆一氏。1910年生まれ。14歳で埼玉銀行入行。勤めながら家業の農作業を助け、はたまた父の借金を背負いそれを返済する。かたや、独学で法律、経営、経済、宗教、歴史を修め、銀行では最年少で課長に抜擢される。その後、常務、専務取締役などを歴任。日本光学工業副社長を経て、現在農業に励む日々を迎えている。その有為転変の人生模様を織り成すように、『采根譚』の名文が紹介されていく。人によっては実に尽きすぎる引用解釈と言う向きもあるが、私は、井原流アプリケーションが大好きである。



一行コメント:明の洪応明(字は自誠)著の人生指南書井原流

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一行コメント
:井原氏の論語はくだけた実用書に変身
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一行コメント:「儒・仏・道」の3道を根幹とする人生の指針

菜根譚 (講談社学術文庫)

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