峻厳な訓育に耐えた先人たち

12日、北九州市八幡東区の林の中で、市立皿倉小学校校長永田賢治さんが死亡しているのが発見され八幡東署は自殺とみている。同校では5年生の女子児童(10)が約1年間にわたり、同級生8人から現金計約10万円を脅し取られていたことが発覚。永田校長は市教育委員会に事態を「金銭トラブル」と報告し、「適切ではなかった」と11日に記者会見して謝罪していた(Daily Sports online. 2006/11/13 )。本当に言葉がありません。ひたすら手を合わせるだけです。
http://www.daily.co.jp/gossip/2006/11/13/0000165495.shtml

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その時、父は男衆が勝手口の水をくんできて、大瓶に入れるため、水桶を下ろし、天秤棒をそこにおいたのを見て、これを取って、兄を棒で突き落とし、その上、くみ置いた桶の水を浴びせかけました。
寒中のこととて寒気に堪え難いので、内輪の者は申すまでもなく、四歳の私まで、泣くなく父にお詫びをいたし、二歳の真人までが、驚いて泣きました。
兄が八歳のころの七月五日、午後3時ごろ、手習・礼式の帰りに、折からの雷雨の中を、傘をさし、草子を背負いながら、お屋敷内の坂の多いところを(乃木の宅には二つの坂あり)雨に濡れていっそう重みを増した葉付きの竹を二本持ちながら、声を立てて泣く泣く引きずって帰りますのを聞いて、私が内玄関に出て見ると、足はビショ濡れ、哀れな姿なので、これを見た私も泣き出しました。
これは宅を出るとき、母から七夕に入用の竹を二本御門番に頼んであるから、買ってあったら持って帰るようにと、申し付けられたからであります。
母は平生厳重で、少しでも言いつけに背くとひどく叱られるので、今日もこの通りにしたのであります。(『斜陽に立つ』古川薫著・安久利徳画 毎日新聞日曜連載小説6回目2006/11/05)

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 文中、しごかれている少年は乃木希典、父は希次、述懐しているのは妹キネ。乃木家の場合、母も、父に劣らず希典に厳しかったので、逃げ場がない。少年は自殺を考えたかどうか。乃木家は、その後希典10歳のとき、長府へ帰郷する。そこで、吉田松陰の叔父にあたる玉木文之進の薫陶を受けることになる。この玉木が、桁違いに厳格な人なのだ。吉田松陰が教えを受けているとき、顔に飛んできた虫を払いのけようとしたら、半殺しにされたというエピソードがある。


松陰にしても、希典にしても、どんな辛さにあっても自殺という発想は、恐らく、浮かんで来なかったのではないかと想像しますが、皆さんはどう思いますか。ただ、現代人には、このような厳しさは耐えられないだろうなあとは思う。


なお、『斜陽に立つ』は、司馬遼太郎坂の上の雲で』などで印象づけられた(刷り込まれた)無能な将軍乃木のイメージを塗り替えようとする野心作(連載途中ですが)。われわれが注意しなければならないのは、一旦確立した権威を疑わないことだ。いまの時代には非常に危険な行為である。


一行コメント:玉木文之進の感応力の強さ

世に棲む日日 (1) (文春文庫)

世に棲む日日 (1) (文春文庫)


一行コメント:古川薫による現代語訳

吉田松陰 留魂録 (全訳注) (講談社学術文庫)

吉田松陰 留魂録 (全訳注) (講談社学術文庫)


一行コメント:純粋培養で育った一人の日本人がいる

乃木希典

乃木希典


後で見るサイト:
・松坂の落札額は果たして本当に”安すぎる”のか?

http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__2708279/topics_detail
世界のどかで
http://www.otoa.com/information/feature_story/index.php

東京・明日の日の出:06:15
       日の入り:16:35

国立天文台天文情報センター)
http://www.nao.ac.jp/koyomi/