臓器移植のかかえる問題
日本移植学会は19日、宇和島徳洲会病院で病気の腎臓が移植された問題で、移植医療に携わる医師に対し、学会員、非学会員を問わず、倫理指針の順守と手続きの透明性を呼びかける方針を決めた。同病院の万波誠医師は、院内の倫理委員会などの審査・承認を経ずに、親族外の腎臓移植を実施。さらに、がんに侵された腎臓を移植に使うなど、危険の度合いが分かっていない医療を仲間内で進めていた。
これらの行為には学会の倫理指針に違反するものもあるが、万波医師は学会に所属していないため、処分などを行うことができず、学会内部から「移植医療全体に対する学会の責任と自浄能力が問われている」との声が上がっていた。(2006年11月20日12時56分 読売新聞)
臓器移植の問題は、単に倫理指針を確立したからといって解決するものではなく、臓器移植の是非にまで立ち返って検討しておく必要がある。それは、命をどう捉えるかという、人間の根源的な問題に関わってくる。多くは、臓器が他の個体に移植されることの意味を、科学的にも論理的にもよく理解していないと思う。
命の問題といえば、柳沢桂子さんだ。柳沢さんは、36年間、原因不明の難病にかかり、激痛をかかえ、そのうち、身が不自由になり、仰向けで寝ったきり。最後には、心臓付近の中心静脈にチューブをさして栄養分を補給するに至った。私が敬服するのは、この期間、柳沢さんが、著作を続けたという事実。この世には病名の分からない病気がたくさんあるんですね。
病気があまりにも進行して、いったんは死を選ぼうとしたが、子どもの反対でとどまり、加えて、夫のあくなき努力により、ある薬に遭遇し、劇的に激痛から解放され、ベッドに座れるまで回復したのである。その天の助けは、プレドニン、トフラニール、アモキサン、およびリボトリールを処方した抗鬱剤だった。
抗鬱剤が鬱病以外の様々な病気の治療に用いられることは、一部に知られていたが、柳沢さんの病気は、多発性硬化症に類似する全身性、進行性、難治性の神経疾患であると考えられて、抗鬱剤は、最後の望みを託して、処方された。その劇的な効果は、処方した医師の予想をも、はるかに越えるものだった。
私が、初めて柳沢さんの本に接したのは、『われわれはなぜ死ぬのか』(死の生命科学)だった。死の生命科学という、とっさに意味を取りかねるサブタイトルに目玉がグルリと動いた。これまでだれも語ることのなかった死の進化をたどり、われわれはなぜ死ぬかを考える という本だ。
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どのようなときにアポトーシスがおこるのかという身近な例を引いて述べてみよう。私たちの手には五本の指があるが、胎児に手ができてくるときには、まず丸い肉のかたまりがからだの脇に盛り上がってくる。その先端部分で四本の筋を入れるように細胞が死ぬので、肉のかたまりに切れ目が入って指ができる。この際の細胞死がアポトーシスである。
では、おなじ条件下にありながあら一方の細胞は死に、一方の細胞は生きている。死ぬ方の細胞は、環境からの情報を受けとって、自己のおかれている情況から死ぬべきかどうか判断して、みずからの自殺遺伝子を働かせて自爆する。したがって、アポトーシスは、外因によってただ壊れて死ぬネクローシスとはちがって、「能動的な死」ということができる。
アポトーシスは、発生におけるかたちづくり、からだ全体の細胞数の調整、不要なあるいは危険な細胞の除去のために重要な機構である。
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われわれは、生まれ、成長したあと、老いて死んでゆくものだと思っている。けれどDNAは受精の瞬間から、死に向けて時を刻み始めているのだ。産声をあげる10カ月前から、私たちは死に始めているのだ。生命が36億年の時をへて築きあげたこの巧妙な死の機構を、知っているのと知らないでは、人生の綾の見え方が違う。
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