ローマ法王でさえ、失言します - sei9nen9のブックケース

ローマ法王ベネディクト16世が、去る9月12日、母国ドイツを訪れたとき、演説の中で｢ジハード（聖戦）は神に反する｣と発言しましたが、この発言から五日後に、公の場で謝罪をしました。この発言の余波がまだ尾を引くなか、ローマ法王は，今月28日から12月１日にかけてトルコを公式訪問します。何事もないようにと祈っています。どんな立場の人でも、その人の持つ資質からは逃れることはできません。
参考サイト：
http://www.voiceblog.jp/0088time/228284.html

われわれは、宗教家を、人間離れした高いところに鎮座する特別の人と思いがちですが、宗教ほど世俗的なものはなく、したがって、宗教家も俗世間から超越しているわけではないのです。

“｢神の代理人｣は、なぜホロコーストに対し沈黙したのか”これは、大澤武雄著『ローマ教皇とナチス』という本のキャッチコピーです。第二次大戦中、当時のローマ教皇ピウス十二世は、なぜ、ナチスのユダヤ人虐殺を知りながら、沈黙していたのか。（教皇が正式名）

地上におけるキリストの代理者、使徒の頭ペトロの後継者として、全世界のカトリック教徒から崇敬を集めるローマ教皇。だが、第二次大戦中、モラルの体現者ともいうべき教皇は、人類史上未曾有の犯罪であるナチスのユダヤ人虐殺を止めようとはしなかった。という事実が厳然と残っている。人は人で、何びとも神にはなれないということを知らされる。

｢ヒトラーの教皇｣とまでいわれる親ナチ派であったローマ教皇ピウス十二世（イタリア語でピオ十二世。在位1939〜1958。本名はエウジェニオ・パチェリ）は、大きな論争の種を蒔いて亡くなってしまった。この本は、教皇のこの『沈黙』についての事実関係を、ヨーロッパ文化の基層にまで遡って、丁寧に解き明かしていく。

最後の祈り

主よ、慈悲深い寛大な心を持って
私を憐れんで下さい
かくも長き、いいようのない悲惨な時代を通して
教皇としての私の弱さ、過ち、そして犯した罪の意識は
私がその地位にふさわしくない
足らない者であることを
ますます自覚させてくれました
どうか、私の不徳により心を傷つけ
害を加え、中傷したすべての人々が
私を許して下さいますように

エウジェニオ・パチェリ

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フリードリッヒ・ヴィルヘルム・ニーチェは、44歳のとき、『アンチクリストーキリスト教批判の試み（Der Antichrist. Versuch einer Kritik Des Christentums ）』を上梓しました。この書の現代語訳が、ここでとり上げる『キリスト教は邪教です！』。しかし、残念なのは、書名を素直に、ニーチェ『アンチクリスト』としなかったことです（小さくサブタイトルで載っていますが）。訳者は適菜収氏。これは真面目な翻訳への冒涜です。誤解を招きます。センセイショナルな題名で本を売らんかなの根性を悲しみます。

確かに、キリスト教徒が読んだら、ショックを受けて椅子から転げ落ちるようなことが書かれています。でも、それは、既存の価値体系であるところのキリスト教を徹底批判しているからです。事実、ニーチェの『アンチクリスト』が発表されたからといって、キリスト教徒に大きな変化が起きたわけではありません。一般的に云って、宗教で怖いのは狂信になることです。その意味で本書は狂信への防御には効き目があるかも知れません。

この種の本は内容が微妙なので、一部分を引用するのは誤解を招く怖れがあるのですが、あえて一箇所だけ。本書の第三章[キリスト教はイエスの教えにあらず]の小見出し＜イエスとキリスト教とは無関係＞から（84ページ）。

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イエスの教えはこうです。
―自分に悪意を持っている人に対して、言葉でも、心のうちでも、決して刃向わない。
―外国人と自分の国の人を区別しない。ユダヤ人と非ユダヤ人を区別しない。
―誰に対しても腹を立てない。誰をも軽蔑しない。
―法廷に訴えることもなく、誰の弁護も引受けない。
―どんなことがあっても、たとえ妻が浮気をしても、離婚しない。
イエスはこれらの教えを実行に移そうとしました。イエスにとって、ユダヤ人が行っていた儀式やお祈りは、意味のないものでした。そうではなく、イエスの教えを実践することによってのみ神へ導かれるのです。こうして、イエスは｢罪｣｢罪の許し｣｢信仰｣｢信仰による救い｣といったユダヤ教の教えをすべて否定しました。　
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