心が洗われます。今夜、NHK教育テレビ午後10：25

声を大にして、おすすめします。NHK 知るを楽しむ｢人生の歩き方｣11月は、見城慶和先生が講師で『夜間中学は僕らのふるさと』の題で、今夜、最終の第4回（｢鈍行列車｣で行こう。再放送12月6日（水）午前5：05）を迎えます。見城先生のような人にこそ、国は褒章を与えるべきだと思った。そして、ほんらいは、人間というのは、学びたい動物なのだ、とおもい知りました。ふつうに学べる環境がどんなに恵まれていることか、無為に過ごした罰当たりメを後悔します。

見城慶和氏は、1937年群馬県生まれ。東京学芸大学卒。61年から東京都荒川区立第九中学校夜間学級に27年間勤務。88年から東京都江戸川区立第二中学校夜間学級に10年間勤務。98年定年退職後、東京都墨田区立文花中学校夜間学級に嘱託として5年間勤務。現在は民間の学びの場｢えんぴつの会｣を運営している。

見城氏は云う。それぞれが相手の気もちを察し、互いに支えあいながら学んでいる生徒たちに、教師である私も言葉にできないほど多くのことを教わりました。だから、私は四十五年間｢教えつづけた｣のではなく、夜間中学校に｢通いつづけた｣と思っているのです。

学校はたのしいねえ
許守連

えんぴつなんか、もったことなかったよ。
学校はたのしいねえ。ゆめのようだよ。
字をかくのがうれしい。きゅうしょくもおいしい。
えでもうたでも　さんすうでもたのしい。
このとしになっておぼえるのは　むずかしいけど。
ぶんかさいや　えんそくもたのしい。
こどものときからしらないから
がっこうにきて　わかがえったようなきがするよ。
まえはめがあいていても　みえないのと同じだったから――。
しょくどうへいってねだんを　みてわかるようになった。
えきでも　ひらがなでかいてあるから　ひとりで電車にのれるし
こどものところへも　ひとりでいける。
それがうれしい。
でんわもかけられなかったんだ。すうじがわからなかったからね。
今ではでんわもかけらるよ。

無報酬の報酬ということ

ここでは、基礎学力促進学級の国語の目標として次の四つを立てている。①自分の言いたいことをきちんと伝えられるようにする。②文法的に整った形で三行以上の文章（メモや葉書など）を書けるようにする。③生活に必要不可欠な漢字を読んだり書いたりできるようにする。④生きていくうえでの力になるような文学作品を一つ以上読む。

たとえば、宮沢賢治や石川啄木などの作品をとりあげ、みんなでじっくり考える。普通の学校の授業では、教科書に載っている小説や詩、評論などの｢作品そのものを｣を勉強するが、そうではなく、｢その作品を使って｣、自分の人生を振り返ったり、自分の身に置き換えて考えてみたりする。

そんななかの一つ。井上年栄さん当時三十八歳の男性が作文に書いた｢無報酬の報酬｣という言葉が忘れられないという。井上さんは、実直な土木職人で、計算が苦手、そこで勇気を出して夜間中学の門をくぐった。まわりの人びととよく助け合い、行事などにも積極的に参加。運動会の前には自転車通勤をやめ、自宅から仕事場、仕事場から学校へ走って通い足を鍛えて、八百メートル競争でぶっちぎりの一位になる。そのときの作文。

――　その当日、駆けに駆けた。ただ走るだけが目的であった。とってもつかれた。でもそれで得たものは大きかった。それは無報酬の報酬でした。私はそこで無上の喜びをかみしめました。自分でやらなければ楽しみは得られないと、これこそ自分のものだ、と思いました。それと出会いです。宮沢賢治、魯迅・・・人間はどう生きるのか、おしえてくれます。それにしても私におしえてくれたのは、ここで学んでいる人たちです。その姿にがくぜんとし、生きるということはこういうことだ、ということをしっかり自分にうつしました。――

以前に、授業で、宮沢賢治の｢稲作挿話｣、｢停留所にてスヰトンを喫す｣など詩を取り上げ、賢治が農作業を手伝いながら各地を回り人びとに勉強を教え、何の報酬も受け取らず、そのときの経験が作品に豊かに生かされ、結局もっと大きな報酬を得たと説明したこととが、影響したのでしょうと、見城先生はみる。(以上、第2回｢生きる力を支える言葉｣から)

宮沢賢治は草葉の陰で涙ぐんでいると思います。ほんものの教育がここにはあります。

全国夜間中学一覧：
http://www1.ocn.ne.jp/~apuro21/yatyu004.htm

一行コメント：42年間、夜間中学一筋の神々しさを見よ（10月の講師なかにし礼との合本）