わだつみのこえ記念館が開館する - sei9nen9のブックケース

太平洋戦争で学徒出陣し戦死した学生の手記などを展示する『わだつみのこえ記念館』が来月４日、東京都内（本郷5−29−13赤門アビタシオン1階。Tel：03−3815−8571）にオープンすると、昨夜、NHKが報じていた。戦死した学生の遺族たちも高齢化を迎え、散逸を防ぐ意味でも、記念館に遺品を托すことに決めたという。わが子の遺品を手離す親の断腸の思いが伝わってきた。

いまでは、日本戦没学生の手記を集めた『きけわだつみのこえ』の存在さえ知らない人のほうが多くなったでしょう。いま、私の手許に、“[新版]第二集きけわだつみのこえ−日本戦没学生の手記−日本戦没学生記念会編”があり、その表紙に一葉の写真が載っている。

臨時召集令状

東京市本郷区曙町十六
補充兵　飛行兵　長門良知
右臨時召集ヲ令セラル依テ左記日時到着地ニ参著シ
此ノ令状ヲ以テ當該召集事務所ニ届出ヅベシ

到着日時　昭和拾七年拾月壱日
到着地　　千葉縣葛飾郡柏町東部第百二部隊構内
召集部隊　東部第百二部隊

東京聯隊區司令部　印

これが、俗にいう赤紙である。この紙片一枚で、運命が決まった。すべて待ったなし。この本の前書きの中にこうある。

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本書に遺稿を収めた戦没学生が極限状況のなかで書き残した文章は、周囲への人びとへの愛情に満ち、失われようとする生への嘆きにあふれている。そして、自らが見届けられなかったより明日への希望を、後の世代に託している、改訂作業を通じての私たち思いは、ただ一つ、青春を断ち切られた先輩学徒の悲痛な言葉を、徴兵も戦争も知らない若い人びとが読み取り、しかと受け止めてほしいことに尽きる。

二〇〇三年十二月一日　日本戦没学生記念会（わだつみ会）

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どれもこれも読むだけで胸が詰まってしまうが、乱暴ながら少し抜粋させていただく。

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宅嶋徳光（たくしま　のりみつ）　一九四五年（昭和二十年）四月九日、金華山沖にて飛行訓練中殉職。海軍少尉。二十四歳

昭和十九年三月二十一日〔海軍秋出水航空隊にて〕

君（恋人、八重子）の家で泰山木の大きな白い花を咲かせるころ、俺は前線に出ることと思う。そうなればしばらく日記も記す暇がなくなるだろう。あるいはそれ以前に、君に書く日記も断念せねばならなくなるかもしれない。

日記は元来、自分の行動を記すものだろうか、それとも自分の思想や追想や思考などの内面の、ごく自分自身に関することのみを記すものだろうか、私はそうした狭隘な思慮にとらわれず、いつの日か私を理解してもらいたい人たちに、自分の性格や希望や考えを漫然と示しておきたい｡　けれども人のために・・・そして､見せることのみに書く日記にならないよう心がけよう。

略、

昭和十九年六月三十日　飛行作業あり

八重子、極めて孤独な魂を暖めてくれ。俺は君のことを考えると心が明るくなる。そして寂しさを失うことができる。それで良いのだ。君のすべてを独占しようというのは悪い夢だ。君には君の幸福がきっと待っている。俺は俺の運命、否俺たちの運命を知っている。俺たちの運命は一つの悲劇であった。しかし、俺たちは悲劇に対してそれほど悲観もしていない。寂しがってもいない。俺たちの寂しさは祖国に向けられた寂しさだ。たとえどのように見苦しくあがいても、俺たちは宿命から離れることはできない。（しかし､俺は宿命論者ではない。）

略

唯一つの理想――それは自由に対するものである。
俺の言葉に泣いた奴が一人
俺を恨んでいる奴が一人
それでも本当に俺を忘れないでくれる奴が一人
俺が死んだらくちなしの花を飾ってくれる奴が一人
みんな併せて一人

わだつみのこえ　日本戦没学生記念会ホームページ
http://wadatsumikai.lookscool.com/

一行コメント：｢戦没学生の遺書に見る15戦争｣を｢第二集きけわだつみのこえ｣と改題